那覇地方裁判所 平成11年(行ウ)3号 判決 1999年8月18日
原告
山城光蒲
同
銘刈康雄
同
宮城好一
同
島元ヤス
同
仲程友政
同
志喜屋孝秀
同
古堅いずみ
同
大城朝盛
同
志喜屋孝市
同
当間重一
同
久田友明
同
志喜屋孝治
同
志喜屋千寿子
同
久田友伸
同
当間清子
同
志喜屋孝松
同
志喜屋三郎
同
志喜屋スミ
同
大城朝光
同
志喜屋孝助
同
山城盛光
同
平良良安
同
大城朝孝
同
志喜屋孝則
被告
沖縄税務署長 知念武則
右指定代理人
渋田末明
同
読山司
同
仲間喜美子
同
松尾啓一
同
富村久志
同
古謝泰宏
同
外間克己
主文
一 本件訴えをいずれも却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 原告ら被告が原告らに対してした平成五年度分長期譲渡所得税に関する別紙1記載の平成六年一〇月一四日付け及び平成七年七月四日付け更正処分及び加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。
二 被告
(本案前の答弁)
主文同旨
第二事案の概要
一 前提事実(甲一ないし三、一五、一八、一九(各枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により認められる。)
1 原告らは、都市計画法三五条二項に基づき開発許可済みの通知を受け、宅地造成をした具志川市字赤道大石原土地造成組合(以下「本件組合」という。)の組合員である。
2 被告は、右宅地造成の際の交換分合により譲渡所得が生じたとして、原告らに対し、別紙2記載のとおり、平成六年一〇月一四日及び平成七年七月四日(原告志喜屋三郎については平成七年四月一九日)、平成五年分の所得税の更正処分、決定処分及び加算税の賦課決定処分をした(以下「本件処分」という。)。
3 本件組合及び原告らの一部の者(別紙2「第一回目の不服申立」欄記載の原告)は、本件処分を不服として、平成八年一〇月一日及び同月二十一日、被告に対してそれぞれ異議申立てをしたが、同年一二月二五日、いずれも却下の決定がされた。本件組合は、平成九年一月二四日、右決定を不服として、国税不服審判所長に対して審査請求をしたが、同年四月三日、却下の裁決がされ、同年五月一四日、右裁決を不服として、那覇地方裁判所に訴訟を提起したが、同年九月三〇日、訴えが却下された。右原告らは、右決定に対して、国税不服審判所長に審査請求をしなかった。
4 その後、原告らは、別紙2「第二回目の不服申立」欄記載のとおり、平成一〇年四月一三日、本件処分を不服として、被告に対して異議申立てをしたが、同年七月六日、不服申立期間経過後の異議申立てであるとの理由で却下の決定がされ、同年八月一三日から九月一八日までの間に、国税不服審判所長に対して審査請求をしたが、同年一二月二五日、期限徒過により適法になされていない異議申立てに係るものであることを理由として却下の裁決がされた。
二 被告の主張(本案前の主張)
原告らに対する本件処分のされた日は、平成六年一〇月一四日及び平成七年七月四日であるが、これに対する異議申立てのされた日は平成一〇年四月一三日であって、いずれも国税通則法七七条一項の不服申立期間を徒過しており、しかも、同条三項の「やむを得ない理由」又は同条四項の「正当な理由」もない。したがって、本件処分に対する右各不服申立ては法定期間を徒過した不適法なものであり、右理由により原告らの不服申立てを却下した被告の異議決定及び国税不服審判所長の裁決に何ら違法な点はない。
本件において、原告らが本件処分の取消しを求める訴えを提起するには、国税通則法七五条の不服申立手続を経ることが必要であるところ(同法一一五条一項本文)、右不服申立手続は、申立期間を徒過するなど不適法なものであってはならない。したがって、本件処分に対する不服申立てが法定期間経過後の不適法なものであるとして却下されている本件においては、本件訴えはいずれも不服申立前置の要件を欠く不適法なものとしてすみやかに却下されるべきである。
なお、原告志喜屋孝則は、そもそも審査請求をしておらず、同人にかかる本件訴えは、国税通則法一一五条に反する不適法なものである。
三 原告らの主張
1 本件訴えの適法性(本案前の主張)
被告は、原告らが本件処分後直ちに本件組合の組合長である久田を通して被告に不服を申し述べたにもかかわらず、原告らに異議申立手続を説明しなかったのであり、これは、行政不服審査法二〇条一号の「処分庁が当該処分につき異議申立てをすることができる旨を教示しなかったとき」に該当するものである。また、国税通則法七七条四項ただし書が「正当な理由があるときは、この限りでない」としているのは、税法手続の不知による過誤等により期限を徒過した者の救済のための規定と解するべきである。したがって、本件訴えは適法と認められるべきである。
2 本件処分の違法性
本件処分は、以下の理由により違法である。
(一) 被告は原告らが長期譲渡所得を得たと主張するが、法人税法基本通達二-一-二〇及び所得税法基本通達三三-六-四に違反する。
(二) 本件処分は、租税特別措置法三一条の二に反する。同条は、昭和六二年から平成一三年の間に五年以上所有する土地の有料宅地等のための譲渡についての規定であり、原告らのほとんどは、昭和五〇年以前からの所有であり、しかも、保留地の処分で土地自体の譲渡ではなかった。
(三) 租税特別措置法三三条の二は、換地分合は譲渡にあたらないとしている。
第三当裁判所の判断
一 税務署長がした処分に対しては、その処分をした税務署長に対する異議申立てをすることができるが(国税通則法七五条一項一号)、右不服申立ては、処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には、その受けた日)の翌日から起算して二月以内にしなければならない(同法七七条一項)。
右の異議申立てについての決定があった場合において、なお不服がある者は、国税不服審判所長に対して審査請求をすることができるが、この場合、異議申立てが適法にされたものであることが要件とされ、法定の異議申立期間経過後にされたものその他その申立てが適法にされていないものである場合には、審査請求をすることができない(同法七五条三項)。また、右審査請求は異議決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して一月以内にしなければならない(同法七七条二項)。
右の各不服申立期間については、天災その他期間内に不服申立てをしなかったことについてやむを得ない理由があるときは、不服申立ては、その理由がやんだ日の翌日から起算して七日以内にすることができる(同法七七条三項)。また、不服申立ては、処分があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない(同法七七条四項)。
国税に関する法律に基づく処分で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは、異議申立てをすることができる処分にあっては異議申立てについての決定を、審査請求することができる処分にあっては審査請求についての裁決をそれぞれ経た後でなければ、提起することができない(同法一一五条一項)。
二 以上を前提に本件についてみると、原告らに対して本件処分がされたのは、平成六年一〇月一四日及び平成七年七月四日(原告志喜屋三郎については、平成七年四月一九日)であるところ、原告らから異議申立てがされたのは、平成八年一〇月二一日又は平成一〇年四月一三日であるから、右異議申立ては、処分が行われてから少なくとも一年三か月以上経過した後にされていることになる。そして、この間、天災その他処分の通知が届かなかった等のやむを得ない理由又は正当な理由があったと認めるに足りる証拠もない。
そうすると、原告らが本件処分についてした異議申立ては、いずれも国税通則法七七条一項及び四項の不服申立期間を徒過した後になされた不適法なものであり、その後になされた審判請求も適法な異議申立てを前置しない点において同法七五条三項に反する請求であるといえる。そうであれば、右のとおり不適法な異議申立て及び審査請求を前提として提起された本件訴えは、不服申立ての前置を定めた同法十一五条一項に反し、不適法な訴えであるといえる。
原告らは、被告が異議申立手続を教示しなかったことや国税通則法七七条四項ただし書の規定が税法手続の不知による過誤等により期限を徒過した者の救済のための規定であることを理由として本件訴えの適法性を主張するが、独自の見解に基づくものであり採用できない(なお、原告らに対する処分の各通知書には、「この処分に不服があるときは、この通知を受けた日の翌日から起算して二月以内に沖縄税務署長に対して異議申立てをすることができます。」と記載されており(甲一八)、行政不服審査法五七条一項所定の教示がされている。)。
三 以上のとおり、原告らの本件訴えは、その余の点につき判断するまでもなく、いずれも不適法であるからこれを却下することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 喜加嘉貢 裁判官 井上直哉 裁判官 瀬戸さやか)
別紙1 更正及び加算税の賦課決定額
<省略>
別紙2 ○ 具志川市字赤道大石原土地造成組合員に係る申告、処分等及び不服申立の経緯について
<省略>
別紙2 ○ 具志川市字赤道大石原土地造成組合員に係る申告、処分等及び不服申立の経緯について
<省略>